女子が好きな色 その9
当時の紅染がいかに高価な染色であったかということを物語る資料として、延喜17年(917)に三善清行が奏上した提議を、前田千寸氏が紹介しておられますが、それによると、濃い紅染は、紅花大二十斤(一斤は今の約560グラム)で、絹一疋を染めますが、この価格は当時の庶民二家族の財産に相当する。
まして一人の婦人に五、六疋も染めるとするなら、十所帯分の終身の蓄えが、一人の女の十日間の飾になってしまうというのだから、やや誇張があるにしても大変な経費であったことには間違いない。
そこで、紅花一斤で絹一疋を染める経済的な染色によって得られた色に、二斤染」という色名が今に残っている。
この色は当然ごく薄いピンクですが、この色名には、紅の濃染への憧れや、高価な紅染に対する諦めや悲哀の感じがあって、何となく気の毒な色名です。